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ナディア動物クリニック・動物眼科
ナディア動物クリニック・動物眼科

動物眼科

ophthalmologic

症例写真がございますので、閲覧の際にはご注意ください。

動物眼科について

まず一般的な動物の診療では、ご家族が訴える問題点に基づいて身体検査や血液検査などを行い、間接的な診断をもとに治療を進めます。例えば、「吐き気がある」という訴えに対して診察を行い、「胃腸炎でしょう」という診断が下されることがあります。この診断が間違っているわけではありませんが、獣医師は胃の粘膜の状態や炎症の具体的な様子を直接見たわけではありません。それを確認するには、全身麻酔を施して内視鏡検査を行う必要があります。

獣医師は経験に基づき間接的に診断を下し、症状に見合った「吐き気止め」と呼ばれる薬剤の一つが投与されます。それでも症状が改善されない場合は、内視鏡検査を含む画像診断を利用して、より詳細な診断を行うことが正しい診療だと考えています。

犬の眼科検査

一方、眼科診療では簡単な眼科検査のみで95%以上の患者さんに直接的で正確な診断を下すことが可能です。適切に眼科検査器械を用いることで、眼球の表面の角膜から奥にある網膜までのほとんどのパーツを細部にわたって評価することができます。これは、角膜や水晶体が透明であるためです。

ご家族からの訴えとしては「目が赤い」「目が痛い」「涙が出る」「目ヤニが出る」「目が白い」「目が見えない」などが挙げられます。しかし、先述の一般診療のスタイルにならってその訴えを確認するだけでは、とても正確な診断にはたどり着けません。これだけの情報から強引に間接的な診断を下しても、それぞれの症状を抑える「目ヤニ止め」や「目が見えるようになる薬」は存在しません。それぞれの獣医師が主観で「目ヤニの時にはとりあえずこの薬」、「目が見えない時にはとりあえずこの薬」と決めて処方しているのが現状です。

さらに、眼科疾患は進行が非常に早く、眼に不可逆的な(元に戻らない)変化をもたらすことが多いため、初診時に正確な診断と適切な治療を開始することが重要です。「症状が改善されなければ再度検査して目薬を変えましょう」という診療スタイルは、眼科においては悲しい結果をもたらす可能性があると考えてください。

一般診療において素晴らしいセンスとスキルをもった獣医師であっても、眼科検査器械を適切に利用して十分な眼科診療ができるとは限りません。眼科の疾患に関しては、眼科診療が得意な獣医師に診てもらうことが非常に重要です。近隣では山形静夫先生(山形動物病院・岡山市)、上岡尚民先生(うえおか動物病院・広島市)、福本真也先生(グラン動物病院・高砂市)、川上亮先生(ネクスト動物医療センター・神戸市)がいらっしゃいます。当院での診療が受けられない場合には、ぜひご利用ください。

また、比較眼科学会のホームページには、学会が認定した獣医眼科学専門医の名簿が掲載されていますので、そちらもご参考にしてください。

比較眼科学会 公式ホームページ
猫の診察

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当院で行っている眼科検査について

一般眼科検査

当院では、診察の際に一般眼科検査として、以下の1〜8の項目の検査を必ず実施します。初診や再診に関わらず同様の検査を行います。これらは単純で時間のかからない検査ですが、非常に多くの情報を得ることができます。ただし、7と8の検査はわずかに痛みを伴うことがあるため、省略する場合もあります。

犬の一般眼科検査

1.視診

明るい部屋で顔から顎、頭部を細かく観察します。顔の対称性や額の筋肉の状態、腫れやできもの、脱毛や皮膚病、まばたきの状態、目ヤニや涙、眼球の突出の有無などを系統的にチェックします。
また、角膜に映る天井の蛍光灯の状態から、角膜の表面を覆う涙液膜の状態を把握することも可能です(図1)。

犬の涙液膜
犬の涙液膜
(図1)

2.神経眼科検査

視覚があるか否かを調べる視覚検査において、最も基本的なものは威嚇まばたき反応の確認です。この反応が陽性であれば、網膜(視細胞)から大脳後頭葉の視覚皮質までの視覚経路が正常、すなわち視覚があると判断されます。

また、瞳孔対光反射の観察は、網膜から中脳のエジンガー・ウエストファール核までの反射経路(求心路)と虹彩括約筋までの動眼神経を介した反射経路(遠心路)に異常がないかどうかを調べる検査ですが、これは視覚検査ではありません。

もし虹彩に異常がある場合、瞳孔対光反射は正常に起こらないため検査ができません。その代わりに、眩目反射を観察します。眩目反射の求心路は瞳孔対光反射とほぼ同様ですが、遠心路が顔面神経を介して眼輪筋に至る点が異なります。この反射の観察も、視覚検査とは異なります。

3.ペンライトによる前眼部検査

角膜や前房、虹彩、水晶体、前部硝子体を評価するために、暗い部屋でペンライトを用いて前眼部の観察を行います。ペンライトを検者(獣医師)の視線に一致させて観察すると、角膜や水晶体、硝子体の透明性を確認できます。これにより白内障の有無を確認することができます(図2)。ペンライトを検者の視線から離して斜めから光を当てるようにすると、角膜や虹彩を立体的に観察することができ、角膜表面の病変や虹彩の変化、前房内の異常所見(蓄膿や出血)を検出するのに役立ちます。
猫の高血圧症で起こる網膜剥離は、しばしばこの検査で発見されます(図3)。

犬の白内障
(図2)
猫の高血圧症で起こる網膜剥離
(図3)

4.細隙灯顕微鏡(スリットランプ)による前眼部検査

前眼部全体を大きく拡大して観察するために、細隙灯顕微鏡(スリットランプ)が用いられます。肉眼では確認できない小さな逆まつげや瞼の異常を見つけることができます。また、充血のある白目の血管を細かく観察し、結膜充血、毛様充血、上強膜の鬱血に分けることが可能となり、病変の位置を推定するのに役立ちます。

犬の目の上皮の乱れや欠損
(図4)
犬の目の硝子体の断面
(図5)

光源を広めのスリット光に変えると、角膜表面が観察しやすくなり、上皮の乱れや欠損などを評価できるようになります(図4)。さらにスリット光の幅を狭くすると、角膜、前房、水晶体、硝子体の断面(図5)を観察できるため、どの組織のどの位置に濁りがあるかを鑑別することができます。白内障の混濁の位置や角膜潰瘍の進行具合を評価するには、必須の検査と言えます。

5.眼圧測定検査

眼圧とは眼球の硬さのことであり、眼球内の水の量で決まります。眼圧が低すぎると眼球の形状を保持できなくなり、高すぎると視神経が障害を受けて失明してしまうため、眼圧は一定に保たれています。しかし、眼圧が病的に上昇して緑内障を発症する犬は珍しくありません。そのため、緑内障の診断には眼圧測定が必要です。
当院では、反発式眼圧計であるTono-Vet(図6)またはTono-Vet Plusを使用して眼圧測定を行います。

犬の眼圧測定検査
(図6)

6.眼底検査

眼底の観察はペンライトと非球面レンズを用いた倒像鏡検査で行います。犬でも猫でも、眼底の上半分にはタペタムと呼ばれる金属光沢のある領域(タペタム領域)が観察されます(図7)。タペタムの存在しない領域はノンタペタム領域と呼ばれます(図8)。これらの領域の大きさには個体差があり、これらを欠く動物もいますが、視覚に影響はないと考えられています。この二つの領域がそれぞれ明瞭に見えるかどうかを評価します。網膜浮腫があるとタペタム領域が不明瞭に見えたり(図9)、ノンタペタム領域が白っぽく見えるようになります。

眼底のほぼ中央には、視神経乳頭と呼ばれるわずかに隆起した構造物が観察されます。猫の視神経乳頭はほぼ円形ですが(図10)、犬の視神経乳頭は個体差が大きく、円形、三角形、四角形と様々な形状を示します(図11)。しかし、視神経乳頭が大きく突出している場合には、炎症や腫瘍の発生を疑う必要があります(図12)。逆に、小さすぎたり凹んで見える場合も病的な意味合いがあるため、注意が必要です(図13)。

網膜の表面には、犬、猫ともに動脈および静脈が観察できます。犬では、動脈は視神経乳頭の辺縁部から始まり、静脈はより中心部から始まり、一部は吻合して静脈輪を形成します。猫では、動脈・静脈ともに辺縁部から始まり、静脈輪は見られません。網膜の血管はわずかに蛇行していますが、その蛇行が強くなっていないか、出血がないかなどの評価を行います(図14)。

犬の目のタペタム領域
(図7)
犬の目のノンタペタム領域
(図8)
網膜浮腫により不明瞭に見える犬のタペタム領域
(図9)
猫の視神経乳頭
(図10)
犬の視神経乳頭
(図11)
犬の視神経乳頭
(図12)
犬の視神経乳頭
(図13)
犬の網膜の血管
(図14)
犬の目のタペタム領域
(図7)
犬の目のノンタペタム領域
(図8)
網膜浮腫により不明瞭に見える犬のタペタム領域
(図9)
猫の視神経乳頭
(図10)
犬の視神経乳頭
(図11)
犬の視神経乳頭
(図12)
犬の視神経乳頭
(図13)
犬の網膜の血管
(図14)

7.シルマーティアーテスト(シルマー涙液試験)

専用の濾紙を下瞼の結膜に接触させて、1分間に染み出してくる涙の量を測定します(図15)。この方法で、瞼の内側(結膜嚢)に貯留している涙液量+1分間の基礎分泌涙液量+濾紙の刺激による反射分泌涙液量の合計が測定できます。乾性角結膜炎(ドライアイ)の診断には必須の検査です。

シルマー涙液試験
(図15)

8.角膜染色検査

角膜上皮や角膜実質に欠損が生じると、フルオレセイン染色液で染まりますが、健康な角膜上皮では染まりません。この特徴を利用して、角膜の傷や角膜潰瘍を検出する検査法です(図16)。
上皮に欠損がなくても、バリア機能が不完全な状態では染色されることがあります。ローズベンガル染色液あるいはリサミングリーン染色液も使用されますが、これらの染色液は角膜の傷や潰瘍だけでなく、ムチン(涙の成分の一つ)で覆われていない角膜上皮(図17)や不健康な結膜の上皮も染色されます。

角膜染色検査
(図16)
ムチンで覆われて
(図17)

眼超音波検査と超音波生体顕微鏡検査

眼超音波検査

角膜および水晶体が透明であれば、一般眼科検査だけでも眼球内の精査が可能です。しかし、角膜や水晶体が濁っていたり、出血がある場合には眼球内の様子を把握することはできません。そういった場合には、眼超音波検査を実施して眼球全体の断層像を観察します。これにより、眼の中に発生した腫瘍や網膜剥離(図18)の検出が可能になるだけでなく、水晶体の大きさの変化やズレ(脱臼)、硝子体の変性などを評価することもできます。

眼超音波検査
(図18)

超音波生体顕微鏡検査

超音波生体顕微鏡検査は、より高い周波数の超音波を用いて、角膜から虹彩、毛様体までの断層像を大きく拡大して観察する検査です。角膜の厚さを測定したり、虹彩内あるいは虹彩裏面に発生した腫瘍や炎症性病変の鑑別に利用できます(図19)。

超音波生体顕微鏡検査
(図19)

光干渉断層計検査(OCT検査)

光干渉断層計(Optical Coherence Tomography; OCT)は、網膜の各組織が持つ近赤外光の干渉作用の差を画像化することで、病理組織標本に近い網膜の断層像を描出する検査機器です(図20)。臨床の現場で実施することができない網膜生検(網膜の組織を一部切除して病理組織を観察する検査)をリアルタイムで実施しているのと同等の情報を得ることができる、画期的な検査法です。
ミニチュアダックスに多い遺伝性網膜変性症では、網膜の正確な厚さを計測できるため、その進行状態を客観的に評価することができます。緑内障の眼底に見られる神経節細胞の変化は眼底検査では、網膜浮腫と混同して判別が困難ですが、OCT検査を実施することで確認できるようになります(図21)。

特に、突発性後天性網膜変性症候群(SARDs)は視覚障害の疾患をすべて除外することで診断が行われていましたが、OCTを利用することでSARDsの特異的な網膜の変化(図22)を確認でき、より正確な診断が可能です。そのため、SARDsの診断と治療には欠かせない検査装置と言えます。

また、OCTは網膜だけでなく、角膜や虹彩、隅角の組織像も描出することが可能です。

光干渉断層計検査(OCT検査)
(図20)
光干渉断層計検査(OCT検査)
(図21)
光干渉断層計検査(OCT検査)
(図22)

網膜電図検査

網膜電図検査とは、網膜に光が当たった際に発生する電位の変化を検出することで、網膜が正常に機能しているかどうかを調べる検査です。当院では薬物を投与することなく、落ち着いた環境で検査を実施します(図23)。混合応答のほか、桿体応答、錐体応答、フリッカーなど条件を変えて検査を行い、遺伝性網膜疾患の診断に利用しています。
また、白内障手術の術前検査としても必ず実施し、術後に目が見えるようになるかどうかを確認しています。

網膜電図検査
(図23)

蛍光眼底造影検査

眼底にある網膜や脈絡膜には血管系がよく発達しており、脳と同じように血管内の成分が漏れ出さないような特殊な構造の血管からできています。眼底疾患によってはこのバリアのような血管構造が破綻することが知られており、このバリア構造が保たれているかどうかを確認するために、蛍光眼底造影検査が実施されます。腕の静脈から蛍光色素を注射して、眼底に出現する蛍光を専用観察装置で継時的に観察します(図24)。
当院では、糖尿病網膜症の検出や全身性高血圧症の評価などに利用しています。

蛍光眼底造影検査
(図24)

検査費用について

眼科診療におきましては、特別な検査機器を使用する関係上、個別の検査費用および手術費用はそれなりに高額になります。しかしながら、ほとんどの診察はもっとも基本的な一般眼科検査のみで完了します。特別な眼科検査機器を完備していますが、すべての症例にこれらを使用して高額な検査費用を請求することはありません。本当にその検査・治療が必要な患者さんにのみ実施します。

できるだけ単純な検査でワンちゃん・ネコちゃんに負担をかけず、完璧な診断を行うことが美徳であると院長は考えています。

動物眼科の検査機器

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